もちろんです。
「肉離れ(にくばなれ)」について、医学的なメカニズムから治療・予防まで、超詳しく説明します。
(※正式名称は「筋挫傷(きんざしょう)」や「筋断裂(きんだんれつ)」です。)
🔬 1.肉離れとは?
肉離れとは、筋肉の一部の線維(筋線維)が急激な力で伸ばされ、部分的に断裂した状態を指します。
簡単に言えば、「筋肉が引き裂かれたケガ」です。
筋肉は「ゴムのように伸び縮みする組織」ですが、限界以上に引き伸ばされると中の線維が切れてしまいます。
🧠 2.発生のメカニズム(なぜ起こるのか)
筋肉は「縮む」と「伸びる」の2つの動作を同時にすることがあります。
肉離れは特に「伸ばされながら力を出す動き(遠心性収縮)」のときに起こります。
例:
- ダッシュするとき:
太ももの後ろ(ハムストリング)が伸ばされながら力を出す。 - ジャンプ後の着地時:
ふくらはぎ(腓腹筋)が伸ばされながら衝撃を吸収する。
この「伸ばされながら力を入れる」状態で、筋線維の一部がブチッと裂けます。
🦵 3.好発部位(よく起こる場所)
| 部位 | 主な筋肉 | 発生シーンの例 |
|---|---|---|
| 太ももの裏(ハムストリング) | 半腱様筋、半膜様筋、大腿二頭筋 | ダッシュ、キック、ジャンプ |
| 太ももの前(大腿直筋) | 大腿四頭筋の一部 | サッカーのシュートなど |
| ふくらはぎ(腓腹筋) | 腓腹筋内側頭 | 瞬発的なスタート、ジャンプ着地 |
| 内もも(内転筋) | 長内転筋、大内転筋 | サッカー、方向転換、開脚時 |
⚡ 4.症状
重症度によって症状が異なります。
| 程度 | 筋線維の損傷 | 症状 |
|---|---|---|
| 軽度(Ⅰ度) | 微細な断裂 | 軽い痛み・違和感、歩行可能 |
| 中等度(Ⅱ度) | 筋線維の一部断裂 | 強い痛み、腫れ、歩行困難 |
| 重度(Ⅲ度) | 完全断裂 | 激痛、内出血、筋肉が変形、歩行不能 |
💡重症のケースでは「ブチッ」「パンッ」と音がすることもあります。
🧊 5.応急処置(RICE処置)
発症直後は「RICE」を守るのが鉄則です。
| 項目 | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| R:Rest(安静) | 動かさない・負荷をかけない | 損傷の拡大防止 |
| I:Ice(冷却) | 15〜20分冷やす(1時間おきなど) | 炎症・腫れ・出血を抑制 |
| C:Compression(圧迫) | 弾性包帯などで軽く圧迫 | 内出血の抑制 |
| E:Elevation(挙上) | 心臓より高くする | 腫れ・出血の軽減 |
❌ ほぐしたり、温めたり、ストレッチしたりは発症初期には絶対NGです。
🧬 6.治療の流れ
🩹【急性期(発症〜3日)】
- 冷却・安静が最優先。
- 無理に歩かない。
- 痛みが強い場合は整形外科受診。
- 超音波検査で断裂の程度を確認。
💊【亜急性期(4日〜2週間)】
- 炎症が落ち着いたら軽いストレッチや電気治療(低周波・超音波)開始。
- 鍼灸ではこの時期に血流改善・治癒促進を狙う治療が効果的です。
🏃【回復期(2〜6週間)】
- 軽い筋トレ(再断裂防止)
- 関節可動域の回復
- スポーツ復帰前に段階的リハビリ
🔥 7.再発率が高い理由
肉離れは「治ったと思っても再発する」ことが多いです。
再発率は**30〜50%**とも言われます。
理由:
- 損傷部位が完全に修復しないまま復帰
- 筋肉の柔軟性・バランスの低下
- 古い瘢痕組織が残る
- 体幹(コア)の安定性不足
🧘♂️ 8.予防法
- ウォームアップ・クールダウンの徹底
- 体温を上げて筋肉を柔らかく。
- 柔軟性の維持
- 太もも裏(ハムストリング)・ふくらはぎをよくストレッチ。
- 筋力バランスの調整
- 前後の筋肉(大腿四頭筋とハムストリング)を均等に鍛える。
- 疲労の蓄積を防ぐ
- 睡眠・栄養(特にたんぱく質とビタミンC)をしっかり。
- 鍼灸治療での予防的ケア
- 血流を促し、筋膜の柔軟性を保つことで再発防止に有効です。
🩻 9.画像的に見る肉離れ(イメージ)
正常筋肉: ==========
軽度損傷: ==========
中等度損傷: === ===
重度損傷: === ===(完全断裂)
MRIや超音波検査では、「黒く抜ける部分(液体=出血)」として確認されます。
💡 10.鍼灸での肉離れ治療の考え方(補足)
鍼灸では、
- 急性期:患部を避け、周囲の緊張を緩める
- 亜急性期〜回復期:血流改善・瘢痕組織の修復促進
- 慢性期:柔軟性の回復・再発予防
と、段階的にアプローチします。
筋膜リリース的な浅刺しや、低周波鍼通電(パルス治療)も効果的です。
⏱ まとめ(回復目安)
| 重症度 | 回復期間 | 備考 |
|---|---|---|
| 軽度(Ⅰ度) | 約1〜2週間 | スポーツ復帰可 |
| 中等度(Ⅱ度) | 約3〜6週間 | リハビリ必須 |
| 重度(Ⅲ度) | 約8〜12週間 | 手術が必要な場合あり |


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