『高校生科学オリンピックの青春 理系の子』(ジュディ・ダットン著)は、「天才の物語」ではありません。
本当に描かれているのは、
「なぜ普通の高校生が世界最高レベルの研究をするようになったのか」
という成長の物語です。
舞台は、高校生版ノーベル賞とも呼ばれる世界最大の科学コンテスト「ISEF(インテル国際学生科学フェア)」。世界各国の予選を勝ち抜いた約1500人の高校生が集まり、数年かけた研究成果を競います。研究のレベルは大学院生以上と言われることもあり、賞金・奨学金も非常に高額です。
一言でいうと
「好き」が人生を変える。
スポーツには甲子園があります。
音楽にはコンクールがあります。
そして科学にはISEFがあります。
本書は、その「科学の甲子園」に青春を懸けた少年少女たちの実話です。
この本のテーマ
著者が伝えたいことは非常にシンプルです。
天才だから研究するのではない。
好奇心を持ち続けた人が天才のように見えるだけ。
IQではありません。
学校の成績でもありません。
一番大切なのは
「なんでだろう?」
を諦めないことです。
ISEFとは何か?
日本でいう自由研究とは全く違います。
例えば
普通の高校生なら
「植物の成長」
くらいですが、
ISEFでは
・新しい医療技術
・新素材
・AI
・宇宙工学
・遺伝子
・数学理論
・新エネルギー
などを研究します。
中には
企業や大学より先に発見する高校生までいます。
そのため
企業が研究を買い取ることもあります。(本の話)
本書に登場する少年少女たち
本書は一人ではなく、多くの高校生を追っています。
それぞれ人生が全く違います。
① 核融合を夢見る少年
幼い頃から
爆薬
ロケット
原子力
に夢中。
普通なら危険だから止められます。
しかし彼は
「もっと安全に」
「もっと正確に」
を考え続け、
高校生で核融合炉に挑戦します。
ここで重要なのは
危険人物ではなく
純粋な探究心。
危険を楽しんでいるのではなく、
物理法則を理解したいだけなのです。
② 自閉症の子どもを救いたい少女
彼女には
自閉症の親族がいました。
だから研究テーマは
「どうしたら学習できるのか」
でした。
何百時間も観察し、
教育プログラムを作ります。
研究とは
論文を書くことではなく、
誰かを助けること
なのだと教えてくれます。
③ ハンセン病になった少女
人生最大の試練。
しかし彼女は
絶望しません。
逆に
「病気を研究しよう」
と決意。
患者だからこそ見える視点があります。
苦しみが
研究テーマになりました。
④ 少年院の理科教師
この本で最も感動的な人物の一人。
犯罪を犯した少年たち。
周囲は
「将来はない」
と思っています。
しかし教師だけは違いました。
望遠鏡を渡し、
星を見せ、
科学を教えました。
すると
暴力しか知らなかった少年が
火星研究を始めます。
ここで著者は
「才能は環境で潰される」
ことを描いています。
⑤ 日本人少女
世界大会で注目された日本人。
テーマは
とても小さな生物。
有孔虫など微小生物を調べ、
昔の地球環境を推定する研究です。
「地味」ですが、
地球の歴史を知る重要な研究でした。(本の話)
共通点は何か?
著者は
全員に共通する特徴を見つけています。
① 好奇心が異常に強い
授業だから勉強するのではありません。
気になるから調べる。
誰にも言われなくても調べる。
止められても調べる。
② 失敗が普通
何百回失敗しています。
成功するまで続ける。
スポーツ選手と全く同じです。
③ 親は答えを教えない
意外ですが
親は
「勉強しなさい」
と言いません。
代わりに
「好きなだけやっていい」
と言います。
失敗も認めます。
④ 指導者が優秀
学校の先生
大学教授
地域の科学者
みんなが協力します。
才能は
一人では育ちません。
天才とは何か?
この本で一番印象的なテーマです。
著者は
天才とは
IQではない
と言います。
例えば
普通の人なら
「なるほど」
で終わります。
でも彼らは
「本当にそうなの?」
から始まります。
疑問を止めません。
だから研究になります。
科学研究とは
著者は
科学とは
知識ではなく
質問を作る仕事
だと言います。
答えを覚える人ではなく
質問を考える人が研究者になります。
勝者だけが主人公ではない
最後にISEFで優勝者が決まります。
しかし著者は
誰が勝ったかより
そこへ来るまでの人生を描いています。
だから読後感は
スポーツ漫画に近いです。
日本人が読むと驚く点
本書では
高校生でも
大学研究室を自由に使い、
教授と共同研究し、
企業と協力しています。
「高校生だから無理」
という考え方がほとんどありません。
能力があれば年齢は関係ない。
この文化の違いは非常に印象的です。(本の話)
この本から学べること ベスト10
- 好奇心は才能より重要
- 天才も失敗を繰り返す
- 問題を見つける力が研究の第一歩
- 科学は暗記ではない
- 「なぜ?」を持ち続ける人が成長する
- 苦しみや経験が研究テーマになることがある
- 優れた指導者や環境が才能を伸ばす
- 科学は社会を良くするための手段
- 年齢は研究の限界ではない
- 「好き」が最大の原動力になる
「高校生科学オリンピックの青春 理系の子」ジュディ・ダットン

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