平均律と純正律は、音楽の調律法に関する概念で、それぞれ異なる特性と音響的な効果を持っています。以下に詳しく説明します。
1. 平均律(Equal Temperament)
特徴:
- 1オクターブを12の等間隔な半音に分割する調律法です。
- 各音の周波数比は隣接する音に対して一定((2^{1/12})倍)となります。
- すべての調で同じ和音感が得られるため、転調が容易です。
長所:
- 自由な転調:
- 全ての調で均一な響きを持つため、転調(キーを変えること)が自然に行えます。
- 楽器の汎用性:
- ピアノやギターのような固定音程の楽器で広く使用されます。
短所:
- 純正な和音の不在:
- 和音のうち、純正律のような完全に調和した音程は存在しない。
- 特に長三度や完全五度がわずかにずれています。
効果:
- 総じて均一でバランスの取れた響き。
- ロマン派以降の音楽(ショパン、ドビュッシーなど)や現代音楽において、転調が頻繁に行われるため、非常に実用的。
2. 純正律(Just Intonation)
特徴:
- 音程を整数比(例: 2:1, 3:2, 5:4)に基づいて調整します。
- 各和音が非常に調和的で、共鳴が豊かです。
- 基準音(例: ド)を中心とした調に最適化されています。
長所:
- 調和の取れた響き:
- 和音の調和が際立ち、美しい共鳴を生み出します。
- 特に教会音楽やアカペラにおいて好まれる。
- 自然音階に近い:
- 音響的に「自然な」響きが得られます。
短所:
- 転調が難しい:
- 他の調に移ると、音程が不自然に感じられる(「狼音」と呼ばれる不快な音程が生じる場合もある)。
- 適用範囲が限られる:
- 基本的に単一の調(または近親調)に限られる。
効果:
- 単一の調で演奏される音楽では、非常に心地よい調和感が得られる。
- バロック時代の教会音楽や、アカペラの和声などに特に効果的。
主な違い
特徴 | 平均律 | 純正律 |
---|---|---|
音程の比率 | 等間隔(12平均律) | 整数比 |
調和感 | 均一でバランスが取れている | 特定の調で非常に調和的 |
転調 | 自由 | 制限が多い |
使用例 | 現代音楽、ロマン派以降の音楽 | 古典音楽、アカペラ、教会音楽 |
効果の具体例
- 平均律の響き: ベートーヴェンのような大胆な転調を含む曲では、平均律の均一性が効果的。
- 純正律の響き: 教会で歌われるグレゴリオ聖歌や、アカペラ合唱では純正律の純粋さが際立つ。
まとめ
- 平均律は「汎用性」を重視し、転調の多い現代音楽や多様なジャンルに対応。
- 純正律は「調和の美しさ」を重視し、特定の調における自然で豊かな響きを活かす。
どちらを選ぶかは、音楽のスタイルや目的、また使用する楽器によって異なります。
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