鍼治療におけるツボとトリガーポイントは、どちらも鍼を使った治療でよく使われる部位ですが、それぞれ異なる概念や治療の考え方に基づいています。
1. ツボ(経穴)とは
ツボは、東洋医学の経絡(けいらく)理論に基づいた概念です。東洋医学では、人の体には「気」と「血(けつ)」が流れる経絡があり、ツボはその経絡上に存在する特定のポイントとして考えられています。この経絡やツボは、内臓や体内のバランスに関わりがあり、ツボを刺激することで全身の気の流れが整い、体全体の調和が取れると考えられています。具体的には、以下のような特徴があります。
- ツボの位置は伝統的な理論に基づいて決まっており、人体に約360箇所が定義されています。
- それぞれのツボには特定の効能があり、ツボを刺激することで自律神経や内臓機能、免疫系などに作用するとされています。
2. トリガーポイントとは
一方で、トリガーポイントは、西洋医学の筋肉や筋膜の解剖学的知識に基づく概念です。トリガーポイントは、筋肉が過度に緊張したり負担がかかることによって形成される、痛みを誘発する部位です。筋肉内に「しこり」や「こわばり」として存在し、押すと痛みが広がることがあります。特徴としては以下の通りです。
- トリガーポイントは、筋肉の緊張や過剰な使用によって発生するため、位置が個人や症状によって異なります。
- そのため、筋膜や筋肉の状態に合わせて位置を特定する必要があり、症状が出ている部分と必ずしも一致しないことが多いです。
- トリガーポイントへの刺激は、筋肉の緩和と血流の改善を目的とし、特に慢性的な筋肉の痛みやこりの治療に用いられます。
ツボとトリガーポイントの違いまとめ
- 理論背景:ツボは東洋医学の経絡理論に基づき、トリガーポイントは西洋医学の筋肉・筋膜理論に基づきます。
- 位置の定義:ツボは経絡上の決まった位置にあるのに対し、トリガーポイントは筋肉や筋膜の状態に応じて変わります。
- 効果の対象:ツボは体の気や内臓機能のバランスを整える目的があり、トリガーポイントは筋肉や筋膜の緊張を緩めて痛みを改善する目的があります。
鍼治療での使い分け
鍼灸師は、患者の症状や体質、痛みの原因に応じてツボとトリガーポイントを使い分けたり、両方を併用して治療を行うこともあります。このように、ツボとトリガーポイントは異なる理論やアプローチを持ちながらも、互いに補完的な役割を果たしています。
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