「人は老いたから走るのを止めるのではない、走るのを止めるから老いるのだ」
クリストファー・マクドゥーガルの著書『BORN TO RUN: 走るために生まれた』は、ウルトラランニング(超長距離走)と、それを通じた人間の進化や文化について深く掘り下げたノンフィクション作品です。以下に詳しく要約します。
概要とテーマ
本書は、著者クリストファー・マクドゥーガル自身のランニング中のケガがきっかけで始まります。医者に「走るのは身体に悪い」と言われた彼は、「それではなぜ人間は走れるように進化したのか?」という問いに突き動かされ、人間が持つ「走る能力」の秘密を探る旅に出ます。
特に注目したのが、メキシコ北部の山岳地帯に住む「タラウマラ族」という民族です。彼らは驚異的な持久力を持ち、超長距離を楽々と走ることで知られています。本書は彼らとの交流、ランニング哲学、科学的な研究、そして著者自身の挑戦を軸に進行します。
主な内容とエピソード
1. タラウマラ族の驚異的なランニング能力
- タラウマラ族(ララムリ族とも呼ばれる)は、チワワ州のコッパーキャニオンという山岳地帯に住む先住民族。彼らは素朴なサンダル(ワラチ)を履き、数百キロを走ることができる。
- 彼らのランニングは単なる移動手段ではなく、生活の一部であり、精神的・文化的な行為でもある。
- 彼らの健康状態は非常に良好で、肥満や生活習慣病がほぼ見られない。
2. ランニングと人間の進化
- マクドゥーガルは、アメリカの進化生物学者デイヴィッド・レインズ博士らの研究を紹介し、人間が「持久狩猟」という方法で食料を得ていたことを強調。
- 人間の身体は、長距離を走るために進化していると説明。たとえば:
- 汗腺による優れた体温調節機能。
- 足のアーチやアキレス腱のバネ効果。
- 長時間動き続けられる心肺機能。
3. 現代のランニング文化への批判
- 現代のランニングシューズが逆に足を弱め、ケガを引き起こしている可能性を指摘。
- ナイキなどのランニングシューズメーカーが「クッション性能」や「サポート」を強調するが、タラウマラ族はシンプルなサンダルでケガをしない。
- 著者は、裸足ランニング(ベアフットランニング)の可能性に注目する。
4. ウルトラランニングの世界
- アメリカや世界で広がるウルトラランニング(50km以上の長距離走)の魅力。
- ランナーたちが経験する達成感や、過酷な条件下での自己発見の物語。
- 特に、伝説的なランナーたち(スコット・ジュレクなど)とタラウマラ族のランナーがコッパーキャニオンで競い合うレースが描かれる。
5. 心の平穏とランニングの関係
- タラウマラ族は、競争心よりも楽しみや調和を重視して走る。
- ストレスフリーであることが彼らの驚異的な持久力の秘訣である可能性。
主要メッセージ
- 人間は走るために進化した生物である
- 私たちの身体は長距離ランニングに適応している。
- 走ることは単なる運動ではなく、人間の本能的な活動。
- 現代社会の影響で、自然な走り方を失いつつある
- シューズやライフスタイルの変化により、ケガや慢性疾患が増加。
- 自然なランニングフォームを取り戻すことが重要。
- ランニングの本質は「競争」ではなく「楽しむこと」
- 心の余裕を持ち、楽しみながら走ることで、走ることが人生そのものの喜びとなる。
感想と影響
『BORN TO RUN』は、ランニング愛好家や初心者だけでなく、健康や進化論に興味のある読者にも新たな視点を提供します。特に裸足ランニングや自然な走り方に興味を持つ人々の間で一大ブームを巻き起こしました。また、タラウマラ族の文化や価値観から、現代の生活スタイルを見直す契機を与えています。
この本を読むと、走ることの楽しさや可能性に気づき、単なる運動を超えた深い体験としてランニングを見直すきっかけになるでしょう。
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